Quantcast
Channel: 吉岡正晴のソウル・サーチン
Viewing all articles
Browse latest Browse all 5376

#「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」ストーリー

$
0
0
#「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」ストーリー

【A Change Is Gonna Come Story】

アンセム。

毎週火曜夜にお送りしている「ソウル・サーチン・レイディオ」で今月最後の曲になっているのが、サム・クックの「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」のいろいろなヴァージョンだ。

今日はその「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」ストーリー。

このサム・クックの「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」は、サムがボブ・ディランのプロテスト・ソング「ブロウイン・イン・ザ・ウインド(風に吹かれて)」を1963年に聞いてインスピレーションを得て書いた曲だ。この曲を聴いたこと、さらに、サム本人が自身体験した彼の人生における二つの大きな事件もこの曲の内容に影響を与えた。

その二つの事件とは、彼の最愛の息子が自宅のプールで事故死したこと、そして彼が南部に巡業に行ったときに遭遇した露骨な人種差別だ。

1963年5月、彼がツアー中、ノース・キャロライナ州ダーハムで行われたシット・イン・デモについて議論を交わした後、この曲のベーシックなものが出来上がった。サム自身はひじょうにクリーンなイメージのシンガーだったが、本人は黒人の人種差別などについてはっきりとした意見を持ち、そうしたことを歌にしたがっていた。だがレコード会社や周囲が、そうしたものを止めていた。

1963年6月、生後18ヶ月の息子ヴィンセントがプールで溺死。さらに1963年10月8日、サムとバンドメンバーが、ルイジアナ州シュルヴポートの「白人専用」モーテルにチェック・インしようとしたところ、断られ、トラブルとなり逮捕された。

「ずっと耐えられないと思った時間(とき)が流れる/だが、今やなんとかできそうだと思う/長い時間はかかるだろうが、きっと変革はやってくると信じている」という歌詞に、この二つの事件の影が反映している。

この曲における大きな主題である人種差別問題が、その後のブラックの間でのアンセムとなっていく。さまざまな保守体制が変革していくときのテーマとしても広く、長く受け入れられるようになる。

そして1964年1月30日、ロスアンジェルスのRCAスタジオでサム・クックはこの曲を録音。

1964年3月1日リリースのサム・クックのアルバム『エイント・ザット・グッド・ニューズ』のB面1曲目に収録される。

テレビ生放送。

当初、シングルカットの予定はなかったが、マネージャーのアレン・クラインはこの曲に注目し、サム・クックを全米で放映される『ザ・トゥナイト・ショー』で歌うようセッティング。サムは当初全米のネットワークで歌うことを躊躇したが、アレンに説得され1964年2月7日、番組で生で歌う。ここで歌われた「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」は、おそらく衝撃を与えたであろうが、なんと歴史の皮肉が予期せぬ展開を起こす。

そのわずか2日後、2月9日に別の人気番組『エド・サリヴァン・ショー』にビートルズが初登場し、これが大々的なインパクトを与え、サム・クックの「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」のインパクトが霞んでしまったのだ。しかも不幸なことにNBCは、『ザ・トゥナイト・ショー』におけるサムのパフォーマンスの録画を保存せずに消してしまった。結局、ここで大きな話題となってもよかった「ア・チェンジ…」は注目されることなく、RCAは、それまでのサム・クック路線の「グッド・タイムス」と「エンイト・ザット・グッド・ニューズ」をシングルカット。これは順調にヒットになった。

B面。

それから9ヶ月。サムは1964年11月16日、次のアルバムに先がけてシングル「シェイク」を録音、「ア・チェンジ…」はそのシングルのB面としてリリースされることになる。

だが、その直後、またしても予期せぬ事件が起こる。サム・クック本人が1964年12月11日、ロスアンジェルスのモーテルで不慮の死を遂げることになってしまったのだ。

急遽、RCAは1964年12月22日、シングル盤「シェイク」とB面「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」をリリース。「シェイク」もヒットし始めるが、いくつかのラジオ局のDJたちがB面の「チェンジ…」もかけ始め、最終的に両面ヒットとなる。

そして、チャート的にはそれほどずばぬけた数字は残していないが、この曲は徐々に公民権運動のテーマ曲として広く歌われるようになり、20世紀を代表するマスターピースとなっていく。ボブ・ディランの「風に吹かれて」に影響されて作られたこの「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」は、後にマーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイング・オン」やその他の社会的メッセージ・ソングの基盤となった。

そして、オバマが大統領戦に勝利し、この曲のフレーズを勝利演説の中にいれた瞬間、まさにサムの「変革はいつか必ず訪れる(未来形)」という言葉は、「変革は今、やってきた(現在形)」になった。サムはこの曲のヒットや、人種差別の歴史的変遷、黒人が大統領になったことを目撃することはなかったが、この「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」は、そうした歴史的変遷に大きく寄与した一曲となったのだ。

■ 関連記事

「チェンジ・イズ・ゴナ・カム」から「チェンジ・ハズ・カム」へ~オバマ氏勝利演説
2008年11月08日(土)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-10161914791.html

ENT>GREAT SONG>A Change Is Gonna Come

「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」が最初に収録されたサム・クックのアルバム『エイント・ザット・グッド・ニューズ』(1964年3月1日全米リリース)

Ain't That Good News
Ain't That Good News
posted with amazlet at 14.01.19
Sam Cooke
Abkco (2013-11-14)
売り上げランキング: 101,915


SOLO

Solo
Solo
posted with amazlet at 14.01.19
Solo
A&M (1995-09-12)
売り上げランキング: 92,031



Viewing all articles
Browse latest Browse all 5376

Trending Articles