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Channel: 吉岡正晴のソウル・サーチン
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◎ Nao Yoshioka ナオ・ヨシオカ & Bオウエンズ・ライヴ~ソウル・ミッション完了

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◎ Nao Yoshioka ナオ・ヨシオカ & ブライアン・オウエンズ・ライヴ~ソウル・ミッション(任務)完了

【Nao Yoshioka & Brian Owens Live: Soul Mission Impossible : Done】

遂行。

綿密に計画されたプラン(任務)がきっちり遂行される。まるでテレビ映画『スパイ大作戦(Mission Impossible=ミッション・インパシブル=不可能な任務・指令)』のようだ。

「メイク・ザ・チェンジ・プロジェクト・ツアー2014イン・ジャパン」と題されたナオ・ヨシオカとブライアン・オウエンズの二人によるブルーノート東京でのライヴ。

海外と日本の有望なアーティストを組み合わせ、世界を活躍の舞台にしようという同プロジェクト。セント・ルイスのソウル・シンガーにマーヴィン・ゲイのカヴァー・アルバムを作らせ、そこにナオ・ヨシオカをフィーチャー、マーヴィン&タミー・テレルのデュエットを彼らがカヴァー、最終的に東京で二人のライヴをやるという壮大な一見不可能に思えるようなミッションがこの日完結した。

ファーストもほぼ満員、セカンドも満員という入り。前回のライヴ(2013年12月=代官山=下記ライヴ評参照)では圧倒的に若い人(20代から30代)が多かったが、今回は若い人の比率は高いが、そのほかブルーノートにふだんよく来ている常連とみられる年齢層の高い人たちも見受けられた。

たとえば、ブルーノートのトニー・ベネットの杮落とし(1988年11月)からひんぱんにブルーノートに訪れるK氏はたまたまここでライヴをみたときにスクリーンに映し出されたナオたちの映像を見て、この日何も予備知識はなかったが、やってきた。「彼女は歌、うまいねえ。どういう経歴の人なの?」と僕に聞いてきた。

また業界関係者も多く見られた。一緒に見たゴスペラーズの村上てつやさんは、自身が出演するNHK-FMの番組『ソウル・ミュージック』で3月末にナオ・ヨシオカをゲストに迎えた。彼は彼女を「かつて露崎春女を初めて見たときの衝撃と同じものを感じたんだよね」と語る。もちろん「ソウル・サーチン・レイディオ」でもラジオID付きで昨年の10月から6回以上かけているだけに期待値大だ。

4曲。

ライヴはざっくり言うと4曲ずつナオとブライアンがそれぞれ歌い、さらに4曲を二人でデュエットとして歌うというもの。ナオの前回ライヴについては下記のライヴ評を参照。

■ Nao Yoshioka ナオ・ヨシオカ・ライヴ~丁寧にプロデュースされたソウル系シンガー
2013年12月30日(月)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-11738725333.html

ブライアン・オウエンズは初めてライヴを見る。マーヴィン・ゲイのカヴァーの印象があるせいか曲調によってマーヴィン風に感じられるところもあったが、「レッツ・ゲット・アウト」などで見せたジェームス・ブラウン・マナーがとても印象的だ。きっと、相当ジェームス・ブラウンが好きなのだろう。ミスター・ブラウンのような足裁きも見せていた。いかにも南部にいそうなソウル・シンガーという感じがしたが、まだ30代という若さで、これらのオールド・スクール的ニュアンスで歌うところがおもしろい。先日紹介したセント・ポール&ブロークン・ボーンズも20代であのようなオールド・スクール・ソウルをやるわけだから、そういう若い人たちがけっこういるということなのだろう。ブライアンがそうしたものを追求しているせいか、最近の新しいR&B系シンガーよりははるかに「ソウル度」を感じた。ローカル色の強さが「ソウル度」を強めているのかとも、ふと思った。

ナオは声量があり、歌もきっちりして、そして一生懸命で、本当に正(ただ)しくうまい。このきれいさ、うまさは、ソウル界のカレン・カーペンターのように思った。ところどころでブライアンを食ってしまうような場面もあった。日本人のソウル系シンガーとしてかなりのものだ。

彼女が歌った曲の中では「アット・ラスト」がずばぬけて素晴らしい。これは完全に自分のものにしている。たぶん何百回と歌っているからだろう。エタ・ジェームスで1960年に有名になったが、この曲自体は白人のポップ・ヒット(グレン・ミラーで1942年にヒット)。エタのものも燃えるソウルではなくかなりポピュラー色が強いが、ナオのヴァージョンもとても聴きやすいポピュラー作品になる。

「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」は、ナオのキーにあわせたためか、ブライアンはハイ・ヴォイスからファルセットで歌ったが、これはなかなか珍しいヴァージョンになっていた。(この指摘は村上さんのもの。村上さんに感謝)

また、ブライアンは下記セットリスト5曲目をセカンドセットでは「ビリー・ジーン」をぐっとテンポを落としてユニークなアレンジで披露した。

セカンドは予定されていたアンコール「ハウ・スイート・イット・イズ」が終わった後、拍手が鳴り止まず、もう1曲急遽その場で決めて歌った。ちょうど「何をやるか」というのを僕が座っていた目の前で相談していたので、その突発ぶりがリアルだった。そして歌われた曲はソウル・ミュージックの常識、必須科目「ホワッツ・ゴーイング・オン」だった。このヴァージョンはそれまでの12曲がすべてきっちりリハーサルされ作られたものと比べ、「その場のジャム・セッション」という自由でルーズな雰囲気になっていた。

ルーツ。

一点気になったのはMC。彼女がこの日の感激を語るのはとても微笑ましくよいのだが、「メイク・ザ・チェンジ」の曲の前で長めにこの説明をした。これはブログなどですでに説明してあるのでそれでいいのではないだろうか。ちょっとトゥー・マッチな印象をもったので、もしどうしてもいれるのであれば、もう少しコンパクトにさらりとまとめたほうがいいように思う。

僕は彼女が、「日本人でありながら、絶対に日本語の歌を歌わず、英語だけで歌うシンガー」という新たな小さな洋楽マーケットを作りつつあるようにみえる。それは現状の邦楽マーケットとは相容れず、また日本の洋楽マーケットでもひじょうにニッチ(隙間)なものかもしれないが、おもしろいオルタナティヴな動きだ。

「歌がうまい」ということが、「売れる」絶対要素でなくなっている昨今、彼女には「歌がうまい」、そのことで「売れて」欲しいと強く思う。その「売れる」という意味が武道館でライヴをやることである必要はまったくない。たとえばブルーノート3デイズでも十分だ。

ブライアンとナオが一緒になったことで、ブルーノート公演が可能になり、ある種のケミストリーが生まれた。どちらにとってもまさに「ウィン・ウィン」の形になった。

ブルーノートでのライヴというものは、ある意味、ひとつの到達点という印象があるが、きっとそれもいずれ通過点になるだろう。この日ここまでの不可能な任務(ミッション・インポシブル)は無事完了。さて、次の一手はどのようなものになるか、楽しみだ。

ライヴ後は二人揃ってサイン会。

そして、何より、ナオ・ヨシオカの音楽を新しく知った人には、そこからぜひそのルーツとなっているマーヴィン・ゲイやエタ・ジェームス、アリーサ・フランクリン、サム・クックなどのソウル、R&Bにも耳を傾けて欲しいと思う。そうしたアーティストたちの作品を聴くことによって、彼女のことをよく知り、理解する手助けとなり、そのことであなたの音楽ライフが豊潤になることまちがいないからだ。

~~~

オマケ。

ライヴ後、一緒に見た複数の関係者(計7人)と久々に三宿のソウルナッツへ。だって、村上さんが「9周年だから、ビール一杯90円なんだよ」(注:ただし案内の葉書がないと90円にはなりません)なんて言うもんだから、「行こう、行こう」という話に当然なるわけです。「明日早いから2時間だけね!」と言ってたにも関わらず、結局異様に盛り上がり、朝になってしまった。(笑) その中には林さんや、よういんひょく君もいた。(とばらしてしまう僕)しかし、9周年かあ。早いなあ。オープンしたのがつい昨日のようだ。

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■ナオ・ヨシオカ・アルバム (日本盤のみ)

The Light
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Nao Yoshioka
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■ブライアン・オウエンズ・シングス・マーヴィン・ゲイ (日本盤のみ)

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■ マーヴィン・ゲイ&タミー・テレル コンプリート・デュエット・コレクション (ナオ&ブライアンが歌った「エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ」「オール・アイ・ニード・トゥ・ゲット・バイ」などのオリジナル収録)

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■ ブライアン・オウエンズ 『ムーズ&メッセージス』(ライナーノーツ:林剛)

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■ サム・クック 『エイント・ザット・グッド・ニューズ』(ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム、収録)

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■メンバー

Nao Yoshioka(vo) ナオ・ヨシオカ(ヴォーカル)
Brian Owens(vo) ブライアン・オウエンズ(ヴォーカル)
Michael Hicks(key) マイケル・ヒックス(キーボード)
Shaun Robinson(g) ショーン・ロビンソン(ギター)
Eric Ramey(b) エリック・ラメイ(ベース)
Rob Woodie(ds) ロブ・ウッディー(ドラムス)
Lyn(back vo) リン(バックヴォーカル)

■セットリスト ナオ・ヨシオカ&ブライアン・オウエンズ @ ブルーノート東京、2014年5月1日(木)

( ) lead singer tonight, [ ]=original artists

ファースト・セット

show started 19:01
00. Intro
01. Feeling Good [Nina Simone] (Nao)
02. You’re All I Need To Get By [Marvin Gaye & Tammi Terrell] (Nao + Brian)
03. Spend My Life (Nao)
04. Let’s Get Out (Brian)
05. Till Morning Breaks (Brian)
06. Ain’t No Mountain High Enough [Marvin Gaye & Tammi Terrell] (Nao + Brian)
07. At Last [Glenn Miller, Etta James, Beyonce] (Nao)
08. Make The Change (Nao)
09. Keep Moving On (Brian)
10. Trouble Man [Marvin Gaye] –a riff of Little Ghetto Boy [Donny Hathaway] (Nao + Brian)
11. A Change Is Gonna Come [Sam Cooke] (Nao + Brian)
Enc How Sweet It Is [Marvin Gaye] (Nao + Brian)
Show ended 20:18 (77)

セカンド・セット

Show started 21:48
01. Intro
02. Feeling Good (Nao)
03. You’re All I Need To get By [Marvin Gaye & Tammi Terrell] (Nao + Brian)
04. Spend My Life (Nao)
05. Billie Jean [Michael Jackson]– Ain’t No Sunshine [Bill Withers] (Brian)
06. Ain’t No Mountain High Enough [Marvin Gaye & Tammi Terrell] (Nao + Brian)
07. At Last [Glenn Miller, Etta James, Beyonce] (Nao)
08. Make The Change (Nao)
09. Keep Moving On (Brian)
10. Little Ghetto Boy [Donny Hathaway] – a riff of Trouble Man [Marvin Gaye] (Nao + Brian)
11. A Change Is Gonna Come [Sam Cooke] (Nao + Brian)
Enc How Sweet It Is [Marvin Gaye] (Nao + Brian)
Enc What’s Going On [Marvin Gaye, Donny Hathaway] (Nao + Brian)
Show ended 23:17 (89)

(2014年5月1日木曜、東京ブルーノート、ナオ・ヨシオカ&ブライアン・オウエンズ・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Yoshioka, Nao & Owens, Brian

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