◎ヴィンテージ・トラブル~あらゆるソウル満載のロックグループ~ジェームス・ブラウン、サム、オーティス、ジャッキー、ジミ・ヘンドリックスまで
【Vintage Trouble Live At Blue Note- Saw James Brown, Sam, Otis, Jackie, And Jimi in This Vintage Trouble】
爆発。
2012年8月サマソニ(千葉)、2013年5月グリーンルーム・フェス(横浜)、2014年5月ジャパン・ジャム(新木場スタジオコースト)以来、3か月ぶり通算4回目の来日となるヴィンテージ・トラブル。CDで聞いて気に入っていて、アルバムからの曲も『ソウル・サーチン・レイディオ』でかけていたが、彼らのライヴを見るのは初めて。
一言で結論を言えば、ソウルフルなシンガー、タイとグルーヴ感あふれる3人のバックバンドの融合が実に見事だった。
なにより、リード・ヴォーカルのタイ・テイラーのヴォーカルに、僕はオーティス(・レディング)、サム(・クック)、ジェームス・ブラウン、そしてジャッキー・ウィルソンの面影を見た。完璧に一昔前の「オールド・スクール」なソウル・シンガーだ。時代が時代だったら思い切り普通の「サザン・ソウル」を歌っていたに違いない。ところが、そんなオールド・スクールのソウルマンこの3人のバックによるロック色を全面に出したソウル、ファンクのバンド・サウンドが融合され、ブラック・ロックの実にユニークなワン・アンド・オンリーな味わいをだしている。
ブラック・ロックといえば、ヴァーノン・リードのブラック・ロック・コーリション、バズボーイズ、リード・シンガーがオーティスのようでバックが白人というファイン・ヤング・カニバルズ、あるいは、コミュナーズ、さらに御大ジミ・ヘンドリックスといったあたりがうかぶが、このヴィンテージ・トラブルはそうした先達に勝るとも劣らないアーティストだ。
なにより、1曲目から観客が総立ちになったのには驚いた。そのハイ・エナジーな熱はすごい。こんな熱いソウル・バンドは久々だった。ジャズ・クラブ、ブルーノートがロック・ハウスになった瞬間だ。ヴォーカル面でいえば、あの熱い暑いライアン・ショーあたりを思わせる。
僕が一番感銘を受けたのはタイのヴォーカルと、ステージでの元気爆発のパフォーマンスぶり。まるでジェームス・ブラウンが若かったころのような生きのよさだ。あれで、ミスター・ブラウンがやるようなスプリット(又割り)なんかやったら狂喜乱舞だろう。広いステージではやっているのかな。そして、3人のミュージシャンも完璧にグルーヴが一体化していて、息もぴったりなバンド・サウンドが完成していた。年間200本近いライヴをやるという「ライヴたたき上げ」のリアル・ミュージシャン、リアル・シンガーならではの力強さだった。これは絶対に打ち込みやデスクトップでは作れない音楽だ。
夏フェスなどではやっていないというアコースティック・セットは、この小さなブルーノートという空間にはどんぴしゃで、これもよかった。ドラムスのリチャードがドラムセットから前にでてきてパーカッションだけでのりを演出、ギターのナリーもアコースティックに持ち替え、さらにベースのリックもアコースティック・ギターでベース・パートを受け持つ。仲良しの4人組がキャンプファイアーでも囲みながら、好きな音楽をやっていて、それをさらに仲間が囲みながら見ているといった趣さえ感じられた。とてもいい感じだ。
彼らはセットリストをファーストとセカンドを変えるだけでなく、初日、2日目も変えてきた。こうなると全部見たいと思うファンも当然でてくる。実際この2日4セットを全部見た人や、ファースト・セカンド通しで見た人が何人もいた。ファン層は20代から30代中心で女性が若干多いような気がした。それと外人比率が高かった。
驚いたのは、タイがテーブルの上に乗って歌ったりしたこと。ブルーノートのスタッフが必死にテーブルの脚を押さえる。もっと驚いたのは照明担当の2階部分に上がり、そこから客席に向かってシャウト&シングしていたところ。あの照明のところに上がって歌った歌手は僕の25年以上のブルーノート鑑賞歴史の中でも初めてだ。
タイとメンバーはとにかく観客を煽る。こぶしを上げ、腕をどんどんプッシュプッシュで、上げる。客がそれに反応してプッシュプッシュ。たてのりのグルーヴは、ロックのものだが、タイのヴォーカルがソウルだから、ソウルフルに聞こえる。
彼らにはライヴ前にちょっとだけコメント取りっぽいインタヴューをしたのだが、嬉しいことにタイはライヴの途中、曲間で「ソウル・サーチャーとソウル・サーチン」についてシャウトアウトしてくれた。感謝。
アップテンポのダンス、グルーヴナンバーもよければアコースティックの聞かせる曲も素晴らしい。あっという間の70分。
セカンドではライヴが終わったら、汗も拭かず、着替えもせず、そのまま上の階に直行し、ファン・サーヴィス、サイン会。丁寧にサインをし、写真を撮る。完全なミート&グリートだ。これはファンとしては超嬉しい。
彼らの曲を聴くのは絶対にCDよりライヴで聴くほうがいい。彼らはライヴがものすごく生きているグループだ。しかし、そのライヴを見たら帰りに絶対にCDやグッズが欲しくなる、そんなグループだ。ライヴ→CD→ライヴ→CDと延々とその中毒振りが循環しそうなグループだ。久々にこんなグループに会えた。
シックやインコグニートのように毎年夏でも秋でも1週間くらいブルーノートでやったらどうだろうか。超盛り上がることまちがいない。
唯一リクエストを言えるなら、1セットに1曲でいいのでソウル・クラシックのカヴァーを聞かせてほしい。オーティスの「アイヴ・ビーン・ラヴィン・ユー・トゥ・ロング」でもいいし、ジェームス・ブラウンのどの曲でもいい、ジャッキーでもサム・クックでもボビー・ウォーマックでも、なんでもいい。タイが歌うソウル・クラシックには絶対にノックダウンさせられる。
彼らは最近アメリカのブルーノート・レコードと契約した。新作はブルーノートから来年までに出る予定だ。
初めて見たこともあるせいか、今年僕が見たライヴの中では今のところ1番だ。初日に見てあまりに素晴らしかったので、翌日も見に行ったのは言うまでもない。
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ライヴ前に、「ソウル・サーチン・レイディオ」用に短い時間だったがインタヴューを敢行。しかし、みんなよくしゃべってくれる。近々編集して番組でオンエア、またブログなどにアップします。彼らはジェームス・ブラウンの自伝映画『ゲット・オン・アップ』も、『マッスル・ショールズ』の映画も見ていた。そんな話もでてきた。
(ヴィンテージ・トラブルについては明日以降も続きます)
オフィシャル
http://www.vintagetrouble.com/
http://youtu.be/6fbMmrDItSg
アコースティック・セットの「ネヴァー・マイン」 この歌い方はサム・クックを彷彿とさせる。すごく気に入った!
http://youtu.be/6PBMZztrC9g
■メンバー
Ty Taylor (vocal)
Nalle Colt (guitar)
Rick Barrio Dill (bass)
Richard Danielson (drums)
■セットリスト
Setlist: Vintage Trouble @ Bluenote Tokyo, August 19, 2014
(セカンドセットは見ていませんが、セットリストをもらったのでそのまま掲載します。違いなどありましたらお知らせください)
Show started 19:00
00. CD
01. Blues Hand Me Down
02. Low Down Dirty Dog
03. Nancy Lee
04. Total Strangers
–Acoustic Set-
05. Never Mine
06. Another Man’s Words
07. Run Outta You
--Acoustic Set end
08. Pelvis Pusher
09. Run Like River
10. Nobody Told Me
11. Strike Your Light
Show ended 20:09
Second set
01. Pelvis Pusher
02. Still & Always Will
03. You Better Believe It
04. Total Strangers
--Acoustic Set
05. Not Alright By Me
06. Never Mine
07. Blues Hand Me Down
--Acoustic Set End
08. Lo & Behold
09. Another Man’s World
10. Strike Your Light
11. Run Outta You
(2014年8月19日火曜、東京ブルーノート、ヴィンテージ・トラブル・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Vintage Trouble
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