◇映画『レッキング・クルー』を見て
【Movie Wrecking Crew】
フォーカス。
1960年代にロスアンジェルスの音楽シーンで活躍したスタジオ・ミュージシャンの軍団、レッキング・クルーの栄枯盛衰を描いたドキュメンタリー映画が『レッキング・クルー』だ。
レッキング・クルーは、1960年代から70年代にかけてロスアンジェルスのスタジオ・シーンで活躍していた20人とも30人とも言われるスタジオ・ミュージシャンたちの総称。日々あちこちのスタジオで、スターたちのバック・トラックをレコーディングしていた。
そんなスタジオ・ミュージシャンの一人でギタリスト、トミー・テデスコの息子であるデニー・テデスコが父のストーリーをドキュメンタリー化しようと考え、構想を思いついてから20年近くかかり完成した。
彼らがバックをつとめたヒット曲、アーティストは枚挙にいとまがない。たとえば、エルヴィス、ロネッツ、フランク・シナトラ、ビーチ・ボーイズ、フィフス・ディメンション、グレン・キャンベル、ライチャス・ブラザース、モンキーズなどなど。
オフィシャル・サイト(日本)
http://wreckingcrewjapan.com/
予告編
https://www.youtube.com/watch?v=SIlcfBlIfJI
紹介記事
http://natalie.mu/eiga/news/170600
http://jp.yamaha.com/sp/services/myujin/8555.html
この類のドキュメンタリーとしては、モータウンのバック・ミュージシャンにフォーカスした『スタンディング・イン・ザ・シャドーズ・オブ・モータウン(邦題、永遠のモータウン)』(2002年)や、『オンリー・ザ・ストロング・サヴァイヴ(邦題、ソウル・サヴァイヴァー)』(2003年)、『マッスル・ショールズ』(2014年)などがある。いわゆる表舞台に立つアーティストではなく、裏方で活躍し、これまで日の目をみてこなかったアンサング・ヒーローにスポットを当てたドキュメンタリーだ。
この『レッキング・クルー』もまさにそんな「裏方スポットライト物」。こうした1960年代の音楽、特に洋楽ポップスが好きな方ならまちがいなく楽しめる作品だ。
DVDは、すでにアメリカではでているので、日本でも年内にでも出るのではないかと思う。
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満席。
公開が3月4日までというのでぎりぎり3月2日の朝の回を見た。前日の夜もほぼ満席で席が取れなかったので、翌朝にしたのだが、これも行ってみると満席、その日の夜も満席になっていた。一日2度しかないので、そうなったようだ。
僕はこのシネマ・カリテは『マッスル・ショールズ』のトークショーでやってきて以来。あのときはピーター・バラカンさんと一緒に話しをした。
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映画祭。
この作品は、レッキング・クルーの大勢のメンバーの中のギタリスト、トミー・テデスコの息子、テディー・テデスコが、トミーが肺がんになり、父の業績を記録しようということから始まったという。
一度2008年に音楽業界のイヴェント「サウス・バイ・サウスウェスト」で公開され、その後手直しと、若干のインタヴューが加えられ、また、著作権使用などの権利をクリアし、7年かかり2015年3月全米で一般公開された。
ドラマー、ハル・ブレインも売れっ子スタジオ・ミュージシャンになり、大豪邸を構え、ロールス・ロイスまで手に入れたが、離婚と仕事が減ったことですべてを失い、どこかでガードマンをやっている、という話は、実に寂しい。
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フォーカス。
ドキュメンタリー好きの僕個人の感想としては、もうちょっとテーマをフォーカスしたほうがいいと思った。何人かのすばらしいインタヴューがあるのだが、多くの人の話を入れ込めば入れ込むほどフォーカスが甘くなる。
レッキング・クルーのどこがすごいのか、なぜ匿名だったのか、彼らはそれをどう思っていたのか、なぜ今では忘れられた存在となったのか、一時は大豪邸に住みながらも、いまや一文無しになっているそのアップダウンになった理由など、その中からストーリーのメインになるテーマを絞り、そこにフォーカスすればまちがいなくもっといい作品になる。
なんといっても素材が素晴らしいからだ。
この場合、肺がんでなくなるトミー・テデスコに最初からスポットをあててもよかったと思う。映画の最初のほうでは、数人のラウンドテーブルの会話で、これはこれでもちろんおもしろいのだが、構成をもっとうまくすればいいと感じた。
『永遠のモータウン』や『マッスル・ショールズ』はそのあたりが実に上手だった。
しかし、著作権クリアするのに20万ドル以上かかるというのには驚いた。そのためにクラウド・ファウンディングで資金を集めたそうだ。
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■サントラ
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