Quantcast
Channel: 吉岡正晴のソウル・サーチン
Viewing all articles
Browse latest Browse all 5376

○パティー・オースティン・エラ・フィッツジェラルドを歌い、語る

$
0
0

○パティー・オースティン・エラ・フィッツジェラルドを歌い、語る

 

【Patti Austin Talks About Ella & Sing: Dialogue In The Musical】

 

ダイアログ。

 

これまでのブルーノート公演の中で、もっともトーク(ダイアログ、MC)が多かったライヴではないだろうか。先日行われたパティー・オースティンがエラ・フィッツジェラルドにトリビュートしたショーだ。こんなにレクチャー的な、そしてためになるトークと、それを超一流の歌で実践して見せるなんて、これほどぜいたくな講座は世界広しと言えどもなかなかない。これは初日に見て、もっと広く伝えるべきだった。パティーがエラの歌を歌うライヴということで軽く考えていたが大きな間違いだった。

 

ジャズ・グレイト、伝説のエラ・フィッツジェラルドが今年(2017年)生誕100年ということで、エラ・トリビュート的な出し物が多くなっている。2002年に一足先にエラ・トリビュート・アルバムを出していたパティー・オースティンが今年の春頃から全米、全世界を周っている『トリビュート・トゥ・エラ』が日本にもやってきた。

 

これは、パティーが2002年5月に全米でリリースした『フォー・エラ』というアルバムの楽曲を歌い、エラにトリビュートするというもの。今年の初め、エラが生誕100周年だから、エラの曲を歌ってくれと頼まれたことから、エラについてさらに詳しくリサーチし、エラ・トリビュートのライヴを全世界でやってきた。全米、ヨーロッパ、オーストラリア、アジアなど。来年はアフリカにも行くという。

 

今回のセットリストは、その『フォー・エラ』のアルバム曲順とすべて同じ。基本CDと同じ順で歌を披露する。

 

~~~

 

ライヴ。

 

2017年7月イタリアのジャズ・フェス「ヴィクトリア・ギャステイズ」で行ったライヴの映像がこちら。アルバムと同じ曲12曲を約47分で歌いきる。

https://www.youtube.com/watch?v=lL4mpciTMuY

 

実はブルーノートのセットリストもまったく同じ。メンバーは違うが、編成は同じ。CDとほぼ一緒の流れで最後のアンコールと本編最後の曲の順番が入れ替わっているだけだ。

 

基本となったCD作品。

 

エラ・フィッツジェラルドに捧ぐ

パティー・オースティン

https://goo.gl/bwbDhh

(日本盤は異様に高値がついているが輸入盤かMP3でダウンロード可能)

 

For Ella

Patti Austin

January 1, 2002

アメリカ・アマゾン、MP3で入手可。CD自体は中古で4ドル程度からだが、郵送費が日本までだと20ドル近くかかる。

https://goo.gl/CJ8u48

 

~~~

 

MC。

 

先のイタリアのライヴでは47分ほどだったが、これはダイアログ(トーク)がほぼない。おそらくジャズ・フェスということでタイムテーブルが決まっていて、凝縮したのだろう。

 

ところが、日本ではアンコールを含めると88分。クリスマス・ソングを省いたとしても、37分ほどはダイアログ(トーク、MC)だったのだ。そしてこのトークがめちゃくちゃおもしろかった。まるでエラ・フィッツジェラルド・ストーリーをパティーがおもしろおかしく、ときにしんみりと語る。そしてそこから曲を実際に歌う。まさにエラのドキュメンタリーというか、物語を単なる楽曲だけでなく、ストーリーを聴かせることで実に立体的に見せていたのだ。

 

しかしあれだけしゃべるので、字幕が必要なほど濃密なトークだった。さすがパティーはニューヨーカー、早口だが、滑舌もよく発音がしっかりしていてラジオDJ、ナレーターのようなので、聴きやすく、わかりやすい。まったくかむことなく流ちょうに語る。

 

パティー自身、シンガーとしてまさにストーリーテラーだが、これは文字通りストーリーテラーだった。

 

~~~

 

スキャット。

 

いわく、エラが一時期ストリートでホームレスだったこと、今年の初めにエラの生誕100年を知り、エラ・トリビュートを世界各地に持って行ったことなど、1曲終わるごとに解説、トークを繰り広げる。

 

圧巻だったのは、スキャットの解説のところ。

基本メロディーは同じでそこにアドリブで音を加えるのだと説明してそれを実演。また「トレイディング・エイツ(8小節交代)」の解説、実演も。これは歌手と楽器奏者が8小節それぞれ歌ったり、演奏したりを交互にするスタイル。まるで音楽の授業みたいで実に興味深かった。

 

パティーによると多くの書籍を読み、レコードを聴き、関係者にも話を聞いて、ダイアログ(台本)は自分で書いたという。

 

これはもう一度みたい。できることなら、日本では難しいかもしれないが、字幕付きで再演したらどうだろう。それくらい濃密で、おもしろいレクチャーだった。そして、もちろん、歌のうまさ、すばらしさは言うまでもない。

 

■過去関連記事パティー・オースティン

 

クインシー・ジョーンズ・80歳セレブレーション・ライヴ・イン・ジャパン~セットリスト

2013年08月02日(金)

https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-11584009549.html

 

パティー・オースティン・ライヴ

2010年12月23日(木)

https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-10744067098.html

 

2009年08月23日(日)

パティー・オースティン・ライヴ~パティーとの楽しい夕べ

http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-10326302948.html

(2009年来日ライヴ評)

 

2008年02月06日(水)

パティー・オースティン孤軍奮闘

http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20080206.html

(2008年来日ライヴ評)

 

■書籍

 

Ella Fitzgerald - Original Keys For Singers

Not Available

https://goo.gl/qKPBXA

 

Ella Fitzgerald: A Biography Of The First Lady Of Jazz

Stuart Nicholson

Da Capo Press (1995-08-21)

https://goo.gl/me98jL

 

■セットリスト:パティー・オースティン 2017年12月21日(木)、ブルーノート東京

パティー・オースティン・ライヴ

 

Show started 21:06

01. Too Close for Comfort

02. Honeysuckle Rose

03. You'll Have To Swing It (Mr. Paganini)

04. Our Love Is Here to Stay

05. A Tisket, A Tasket

06. Miss Otis Regrets

07. Hard Hearted Hanna (The Vamp Of Savannah)

08. But Nor for Me

09. Satin Doll

10. The Man I Love

---.  Explaining Scating : Using “Someday My Prince Will Come”

11. How High the Moon

- Encore:

12. Hearing Ella Sing

Show ended 22:34

 

MEMBERS

 

Patti Austin(vo) パティー・オースティン(ヴォーカル)

Kim Hansen(key) キム・ハンセン(キーボード)

Andrew Weiner(key) アンドリュー・ウェイナー(キーボード)

Ernest “Reggie” Hamilton(b) アーネスト “レジー” ハミルトン(ベース)

Nisan Stewart(ds) ニーサン・スチュワート(ドラムス)

 

(2017年12月21日木曜、ブルーノート東京、パティー・オースティン・ライヴ)

 

ENT>MUSIC>LIVE>Austin, Patti


Viewing all articles
Browse latest Browse all 5376

Trending Articles