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Channel: 吉岡正晴のソウル・サーチン
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◎「魂(ソウル)のトランぺッター」キーヨン・ハロルド・ライヴ~パート1~マジシャンの如く七変化

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◎「魂(ソウル)のトランぺッター」キーヨン・ハロルド・ライヴ~パート1~マジシャンの如く七変化

 

【Keyon Harrold Live At Cotton Club: Various Changes Like Magician】

 

マジシャン+ミュージシャン。

 

4人のミュージシャンたちがステージの位置につき、音が出始める。最新アルバム『ミュジシャン(Mugician)』の冒頭に入っている「ヴォイスメール」が始まるとすぐにゆっくりと今日の主人公トランペットのキーヨン・ハロルドが客席を通りながら、ステージに上がった。ちょっとマイルス・デイヴィス風のなかなか威風堂々な姿だった。「ミュージシャン」と「マジシャン」を合わせた「ミュジシャン」。このライヴのテーマはそのタイトルの新作アルバムと連携し、まさにこれのようだった。

 

これまでにもディアンジェロやマックスウェルの来日に帯同していたR&Bとジャズ、ポップなどでも活躍する最近のエース・トランぺッター、キーヨン・ハロルドの初めての自己名義でのライヴ。3日間6ステージの最終公演ということもあってか、超満員、立ち見も出るほど。

 

キーヨン・ハロルドは1980年11月18日アメリカ南部ミズーリ州ファーガソンに16人兄弟の一人として生まれた。ラッパーのコモンらと接点を持ち、ロバート・グラスパーらともつながり、ジャズ、R&Bの垣根を超えて活躍している。ドン・チードル主演のマイルス・デイヴィスの自伝的映画『マイルス・アヘッド』で、マイルスのトランペットの音を映画で担当している。

 

なるほど、他のアーティストのサポートでやってくるのと自身名義でやるのでは、まったく違う。しばらく前に、ハーヴィー・メイソンのバックでやってきて気になったカマシ・ワシントンが自己名義でやってきたときの衝撃と言ったらなかったが、今回のキーヨンも、自分ではこういう音楽をやりたかったのか、と思った。

 

ジャズをベースに、ソウル、R&B、ヒップホップに一つ間違えばスムーズ・ジャズ的なメロディアスな作品まで実に多様性のあるトランペットを聴かせてくれた。

 

~~~

 

MB(マイケル・ブラウン)。

 

いろいろみどころはあったが、圧巻だったのは、「ブラック・ライヴズ・マター」でも大きな話題となったキーヨン本人の出身地でもあるファーガソンで白人警官に意味もなく殺された黒人青年マイケル・ブラウンへ捧げて作った「MBラメント」だ。これはマイケルだけでなく同様に殺された多くの黒人同胞へのトリビュートだが、CDでは5分余の曲をライヴでは17分にも及ぶ長尺で演奏してみせた。いかにこの曲への思い入れがあるのか感じられた。

 

時にマイルス・デイヴィスを、時にヒュー・マサケラを、時にハーブ・アルパートや、まさかのニニ・ロッソまで感じさせてくれた。まさにトランペットでマジシャンのように七変化をみせてくれた。

 

そしてバックのドラムス、チャールズ・ヘインズ、ベースのバーニス・トラヴィス、キーボードのシェデリック・ミッチェル、ギターのニア・フェルダーらが相当きっちりとキーヨンを支える。常に5人の間に緊張感が張り詰め、聴く者を集中させる。

 

基本、最新作『ミュジシャン』からの曲をかなりアレンジして聞かせたが、アンコールだけ今回アレンジをしたというビートルズの「シーズ・リーヴィング・ホーム」をジャズ風にアレンジして演奏した。

 

そして、そこではCDで「ホエン・ウィル・イット・ストップ」に入っているラップのMCを重ね合わせていた。「人種差別、性差別などを非難し、この最悪の状況からいつになったら抜け出せるのか」と語るものだ。「MBラメント」での熱演といい、このアンコールでのラップの入れ具合といい、ブラック・ライヴズ・マター意識の強いキーヨン・ハロルドという印象を持った。

 

ひじょうに緊張感のある、時の流れを忘れさせてくれる良質のライヴだった。何より、彼のトランペットには僕と共有でき、共感できるソウルがあった。まさに「ソウル・トランぺッター」だった。

 

 

左・吉岡、右キーヨン

 

■ビートルズの「シーズ・リーヴィング・ホーム」

The Beatles – She’s Leaving Home

https://www.youtube.com/watch?v=oAYiuFBqyLE

 

(この項、パート2へ続く)

 

■ブラック・ライヴズ・マターについて

 

第57回グラミー・モーメント~ファレルの主張とキング牧師への賛歌

2015年02月10日(火)

https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-11987696106.html

 

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■セットリスト:キーヨン・ハロルド @コットンクラブ丸の内 2018年2月2日(金)

 

Show started 21:05

01.           Voice Mail

02.           Bass solo – Drum solo - The Mugician

03.           MB Lament

04.           Her Beauty Through My Eyes 

05.           Stay This Way

06.           Bubba Rides Again

Enc.  She’s Leaving Home [The Beatles]

Show ended 22:22

 

Members

 

Keyon Harrold (tp,vo)

Shedrick Mitchell (p,key)

Nir Felder (g)

Burniss Travis (b)

Charles Haynes (ds)

 

~~~

 

CDs

 

(最新作、2作目)

The Mugician (輸入盤)

Keyon Harrold

Sony Legacy (2017-10-06)

https://goo.gl/wtQkCd

 

ミュジシャン(日本盤)

キーヨン・ハロルド

https://goo.gl/hjeY1K

 

1枚目

INTRODUCING

KEYON HARROLD Charles Tolliver Marcus Strickland Danny Grissett Dezron Douglas E.J. Strickland Jeremy Most Emanuel Harrold

CRISS CROSS (2009-10-06)

https://goo.gl/Jf1BdE

 

ENT>MUSIC>LIVE>Harrold, Keyon

 

 

 

 


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