◎ 山下達郎ライヴ・シーズン8終了~ますますよく出る声の総合デパート
【Tatsuro Yamashita Tour Season 8 : 】
カルッツ。
2008年からライヴ活動を再開した山下達郎が、2018年のツアーを6月から始め、全49本を敢行、11月8日(木)福岡で千秋楽を迎えた。筆者はその47本目を11月2日(金)、川崎市のカルッツ川崎大ホールで見た。
前回のツアーを見たのが昨年(2017年)6月だったので、ほぼ1年半ぶりのライヴということになるが、この会場は去年完成したこともあり、初めて足を運ぶ。なんとこけら落としをマーチンがやったらしい。達郎さんの説明では、「カルチャー」と「スポーツ」をあわせた「カルッツ」という言葉を中学生が応募してきてそれに決まったそうだ。
キャパ(収容人数)約2000人で、3階まであるが、こじんまりとまとまった会場という印象。全面木製で音を吸収するか。
実はこの川崎、うちからは中野サンプラザより距離も、時間的にも近かったりするので今後ここでのライヴが増えてもらってもいいと思った。
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ベイエリア。
ステージ・バックにはマンハッタンか東京を思わせるような夜景。手前には倉庫のある港湾地区、いわゆるベイエリアのあたりというイメージ。フェデックスならぬファドックス、Sラインのコンテナがドーンと。
おなじみたくさんのドゥーワップが流れてきて、それが終わると、いよいよショータイムの始まり。
冒頭1曲目、「スパークル」からいきなり、達郎さんのカッティング・ギターが炸裂。毎回思うのだが、100%カッティングに徹し、ギタリストとしてメロディアスな部分はすべて佐橋さんに任せるというところが定番だ。そしてこのリズム・ギターをひたすら弾く姿が、ずいぶん前から、あのナイル・ロジャーズの姿と被る。山下達郎=日本のナイル・ロジャーズ説を唱えたい。
今回は、最近亡くなられた元シュガーベイブのベース奏者、寺尾次郎さんへの追悼も含め、シュガーベイブ楽曲をできるだけ当時のアレンジで聴かせるというのがひとつの特徴だった。
それにともない、最近は近しい人達の訃報が多いことに触れ、自身の「死生観」を少しステージで語った。このMCのあとに、「リボーン(Reborn)」が歌われた。
「ベタなオールディーズ・コーナー」、2シーズン前に、フランキー・ヴァリの「キャント・テイク・マイ・アイズ・オフ・ユー(君の瞳に恋してる)」で味を占め、前回はトム・ジョーンズの「イッツ・ノット・アンユージュアル(よくあることさ)」を披露。そして、今回は、なんとロイ・オービソンの「プリティー・ウーマン」に挑戦。1960年代に全米でヒットしたときは、日本ではほとんどヒットせず、人知れずのヒットだったが、1980年代に入り同名映画のテーマ曲となり、誰でも知る曲となった。「この曲を日本で歌わせたら、私は日本で一番です」と語り、歌詞の解説がめちゃくちゃおもしろくて笑った。「昔はとんがってたけど、最近は丸くなった」といいながら、その「プリティー・ウーマン」を歌う。
「アカペラ・コーナー」は「ブルー・ヴェルヴェット」と「おやすみ、ロージー」。
このあたりが折り返し地点で、「クリスマス・イヴ」に。プロジェクション・マッピングでずいぶんと大きな粒の雪が会場に降り注いだ。ちゃんと、流れ星も。
17曲目「レッツ・ダンス・ベイビー」のイントロが流れると、それまでずっと座ってじっと聞いていた観客がしびれを切らしたように、総立ちに。最後のパートはミラーボールも光るダンス・タイム。そして、今回は大瀧詠一作品をメドレーで挟み込む。(下記セットリスト参照)
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ルーティーン。
達郎さんは常々「自分の音楽はMOR=ミドル・オブ・ザ・ロード=といって、中庸な音楽で、以前は誰からも相手にされなかった」と言う。確かに彼の音楽は、ジャンルで言えばMORだが、彼のスピリットはガチガチのロックンロールであり、硬派の職人気質だ。
そしてもう一点、ジャズとしての山下達郎の音楽という視点でも見てみたい。たとえば、今回の「ソリッド・スライダー」などは10分近くになっているかと思うが、各人にソロを回していく。サックス、キーボードなど、比較的音楽的自由度があるパートだ。
彼は、自分のコンサートの基本的な構成は毎回同じだと言う。アカペラ・コーナー、オールディーズ・コーナー、おなじみのヒット、前回とだぶらない楽曲の配置など。これは、毎回は来ない人たちが、しばらく前に来たときとあまりに違うとその日のセットリストになじめないことがあることを考慮してのものと説明した。つまり、彼もいわば「ルーティーンの男」だ。あるいは、「フォーマットを大事にする男」と言い換えてもいい。彼が大好きな落語など、「ルーティーン」「フォーマット」が凝縮されている。
それにしても、よく声が出て、通る。そしていろいろな声が出てくる。声の総合デパートと呼ぶにふさわしい。そして楽器から出てくる音は総合商社だ。まさにジャンルもMORをベースにロック、ファンク、ディスコ、ジャズまで超越する。
それは匠が創る総合芸術だ。
年金受給者になった「ルーティーン好き」の65歳。70歳、80歳までまだまだこの元気っぷりは続くことまちがいない。僕も実は「ルーティーン」が大好きで、大事にしている。そして、年一回(あるいはシーズンごとに)彼のライヴを見に行くという「ルーティーン」を僕も守っていきたい。
■過去記事
前回・シーズン7、2017年3月18日から8月31日までのツアー中、6月9日(金)中野サンプラザで
山下達郎ライヴ~音楽と世相と、趣味と自身の人生の歩みがすべてシンクロ
2017年06月22日(木)
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12285547265.html
ツアー途中だったので、セットリストなどは未掲載。
■過去山下達郎ライヴ関連記事
(古い順に並べて見ました)
=2008年、ライヴ復帰、シーズン1=
May 07, 2008
Yamashita Tatsuro Live At Hamarikyu Asahi Hall
【山下達郎~素晴らしき人生】
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20080507.html
May 11, 2008
Yamashita Tatsuro Acoustic Mini Live @ Hamarikyu Asahi Hall
【山下達郎・アコースティック・ミニ・ライヴ・セットリスト】
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20080511.html
(2008年5月アコースティック・ミニ・ライヴ記事)
大阪フェスティヴァル・ホール最後の日↓
December 29, 2008
Yamashita Tatsuro @ Osaka Festival Hall Final
【山下達郎~フェスティヴァル・ホール最後の日】
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20081229.html
2009年05月12日(火)
全身全霊でかけぬけた50本~山下達郎2008-2009ツアー最終日終了
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20090512.html
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2010年07月08日(木)
ハーヴィー・フークワ80歳で死去~ムーングロウズのリード・シンガー:マーヴィン・ゲイの育ての親
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-10584608240.html
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=2010年、シーズン2=
山下達郎、デビュー35周年ライヴ・ツアー~刻まれ続ける音楽と人生の年輪
2010年11月07日(日)
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20101107.html
山下達郎ライヴ2010、39本終演~物質に付加価値を与える「体験」
2010年11月09日(火)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-10701547198.html
=2011~2012、シーズン3=
山下達郎の音楽を知っている人生と、知らない人生
2012年4月9日
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20120409.html
山下達郎~全国をかけ抜けたツアー・シーズン3
2012年05月14日(月)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-11248277310.html
山下達郎・シアター・ライヴを見て~軸ブレずに四半世紀
2012年08月31日(金)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-11341325362.html
=2013、シーズン4 Performance 2013=
フェスティヴァル・ホールの精霊~山下達郎・フェスの杮落としに登場
2013年05月06日(月)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-11524790693.html
=2014、シーズン5、マニアック・ツアー=
=山下達郎2015~2016ツアー(シーズン6)
山下達郎2015~2016ツアー(シーズン6)始まる
2015年10月16日(金)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12084103885.html
=パフォーマンス2017 (シーズン7)
山下達郎ライヴ~音楽と世相と、趣味と自身の人生の歩みがすべてシンクロ
2017年06月22日(木)
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12285547265.html
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■山下達郎オフィシャルウェッブ
■セットリスト 山下達郎
Setlist : Tatsuro Yamashita, November 2, 2018 @ Cults Kawasaki #47/49 shows
[ ] denotes the artist who made it hit.
Show started 18:35
00. Interlude
01. SPARKLE
02. 新・東京ラプソディー
03. MUSIC BOOK
04. あしおと
05. Windy Lady
06. Down Town
07. SOLID SLIDER
08. Oh, Pretty Woman [Roy Orbison]
09. REBORN
10. シャンプー (達郎on Keyboard)
11. Blue Velvet [Tony Bennett, Bobby Vinton]
12. おやすみ、ロージー [鈴木雅之]~Angel Babyへのオマージュ-
13. Joy To The World [Traditional] ~クリスマス・イブ
14. 希望という名の光
15. ずっと一緒さ
16. 今日はなんだか
17. LET'S DANCE BABY~びんぼう~Niagara Moonがまた輝けば~Hand Clappin' Rumba~夢で逢えたら(吉田美奈子)~君は天然色~幸せな結末~熱き心に(小林旭)~レッツ・オンド・アゲイン~Rock'n Roll March [いずれも大瀧詠一]
18. ハイティーン・ブギ [近藤真彦]
19. アトムの子
20. LOVELAND, ISLAND
アンコール:
21. ミライのテーマ
22. Ride On Time
23. 恋のブギ・ウギ・トレイン [アン・ルイス]
24. LAST STEP (オマケ)
25. YOUR EYES (準アカペラ+サックス)
CD That’s My Desire [Frankie Laine – 1947, Dion & The Belmonts – 1959]
Show ended 21:55
■ メンバー 山下達郎2018 (Season 8)
山下達郎 (歌、ギター)
伊藤広規 (ベース)
難波弘之 (ピアノ、ローズ)
柴田俊文 (キーボード)
佐橋佳幸 (ギター)
小笠原拓海 (ドラムス)
宮里陽太 (サックス)
ハルナ (バックヴォーカル)
エナ (バックヴォーカル)
三谷泰弘 (バックヴォーカル)
(2018年11月2日金曜、川崎カルッツ川崎・大ホール、山下達郎ライヴ)
■関連CD
COME ALONG 3
山下達郎
ワーナーミュージック・ジャパン (2017-08-02)
OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜(通常盤)
山下達郎
ワーナーミュージック・ジャパン (2012-09-26)
■山下達郎・監修・選曲『ドゥー・ワップ・ナゲッツ』3タイトル
Doo Wop Nuggets Vol. 1 / ドゥー・ワップ・ナゲッツ Vol. 1
ALBUM 2018.08.08 発売¥1,852+税/WPCR-18040
ドゥー・ワップ・ナゲッツ VOL.2
オムニバス (アーティスト) 形式: CD
価格: ¥ 2,000
ドゥー・ワップ・ナゲッツ VOL.3
オムニバス (アーティスト) 形式: CD
価格: ¥ 2,000
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