●チャック・ベリー90歳で死去～ロックンロールのパイオニア

【Chuck Berry Dies At 90 : Pioneer Of Rock & Roll】

訃報。

ロックンロール創世記の大立役者の一人、チャック・ベリーが2017年3月18日（土）アメリカ南部ミズーリ州セントルイス郊外の自宅で死去した。90歳だった。

チャック・ベリーはリズム＆ブルーズと南部で人気のカントリー・ミュージックをうまく融合させ、ロックンロールの原型を作った。シカゴのチェス・レコードから発表した「メイベリーン」は1955年8月から大ヒット。ベリーは、黒人だけでなく白人のティーンもレコードを買っていたことを知り、ティーンの悩み、興味があること（デート、車、ファッション）を中心に歌詞にすることを考える。以後テンポのいいダンスができ、覚えやすい作品を次々と送り出し、いわゆる1955年から始まるロックンロール現象の大きな立役者となった。

ほぼ同時期に登場するエルヴィス・プレスリー（1956年3月初ヒット）、リトル・リチャード（1955年11月初ヒット）、ファッツ・ドミノ（1950年2月初ヒット）、ジェリー・リー・ルイス（1957年8月初ヒット）らと並ぶレジェンド。特にベリーはギターを弾きながら歌うことから、ギターを弾きながら歌うアーティストのプロトタイプとなり、後のギタリストに大きな影響を与えた。

ビートルズ、ローリング・ストーンズ、エリック・クラプトンらはみなチャック・ベリーの影響下にある。ベリーがいたから、ビートルズやストーンズ、クラプトンが生まれたという表現も多数見受けられる。

映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)でも、主人公マーティー（マイケル・J・フォックス）が「ジョニー・B・グッド」を演奏するシーンがでてくる。映画ではマーティーが、ベリーで有名になるいわゆる「ダック・ウォーク」（片足で跳びながらギターをプレイするパフォーマンス）を見せる。

そのベリーがもっとも影響を受けたアーティストがルイ・ジョーダン（1908年～1975年、1942年初ヒット）。ジョーダンも、音楽にコミカルな要素を加え、一般大衆にわかりやすい音楽を提供した。その影響を受け、ベリーも誰にでも親しめるわかりやすい音楽を作った。

ベリーは必ずしも、誰にとっても「いい人（グッド・ボーイ、ナイス・ガイ）」ではなかったが、さまざまな伝説、エピソードがある実にユニークでカラフルな人物だ。

そうしたコミカルな要素を取り入れること、大衆（特にティーン）に受け入れられることを狙って歌詞を書き、ギターを弾き、サウンドを作ってきたところが偉大なところだ。

踊れる要素が原点にあるということを考えたとき、チャック・ベリーや初期リズム＆ブルーズ、そこからソウル・ミュージックになり、その派生でいわゆるディスコ・ミュージックが誕生したとすると、ディスコもチャック・ベリーの孫的存在かとも思えてくる。しかし、ロックンロール、ロックがチャック・ベリーの正妻の子供だとすると、ディスコは非摘出子（ひちゃくしゅつし）なのかもしれない。メインストリームに対する傍流（オルタナティヴ）から生まれたもの、ディスコはひょっとしたらだから、バカにされやすいのかもしれない、とふと思った。