○レクチャー「ミュージック・イズ・ミュージック~音楽のパクリについて」第7回~増田聡准教授(大阪市立大学)に参加(1)
【Lecture: Music Is Music: About Rip Off In Music (Part 1)】
パクリ。
音楽プロデューサーの牧村憲一さん、慶應義塾大学の大和田俊之さん、インターFMで番組をお持ちのマス・マスヤマさんらがコーディネーターとなって行っているレクチャー・シリーズ「ミュージック・イズ・ミュージック」の第7回が2017年11月25日午後、渋谷・神宮前のスマートニュース・イヴェントスペースで行われた。講師は増田聡大阪市立大学准教授、テーマは「音楽のパクリについて」。
パワポを使って解説
この会は、牧村さんのツイートで見ていて、前から一度参加したいと思っていたので、この日はそれがかなった。このテーマはずっと長く、僕も追いかけていたので、興味津々だった。
増田さんはパワーポイントで作った資料を事前にプリントし、入場の際に配ってくれた。これは嬉しい。約30面のパワポで、これをA3の紙両面2枚に縮小されて(1枚に9面掲載)プリントされている。最近の大学の授業とかみなこういう形なのだろうか。隔世の感がある。
そして、話は①日本語のパクリ概念の歴史と意味の変容、②音楽の人為的模倣と法的判断、③類似の論理構造の検討、さらに、「音楽の盗作(あるいはパクリ)」に関して、現時点でどのような考え方ができるか、という概要。これを的確にかなり早口で一時間余で講義された。
増田さん
パクリの実例、カヴァー/オリジナルなども音源をかけたりしてわかりやすく解説。また、カヴァーと盗作の違いについてもカヴァーとは何か、音楽の盗作の凡例など具体例を示して話された。
それにしても、さすが教授。話のテンポも速く、テーマも、切り口もわかりやすく、ひじょうに整理されすっきりしている。
ひとつ感じたのは、何度かその言葉を使っていた「象牙の塔」らしいなということ。まさに様々な文献、音資料を掘り起こし、研究し、説を組み立て学問にする。音楽という誰もが身近に聴いているものをこうして系統立ててまとめて、学問にするというのはすごいな、と感じた。
一方で逆に僕は音楽業界に身を置く人間だなあなどと計らずも思ってしまった。
とはいうものの、僕もミュージシャンではなく、ただ若干音楽業界にいるという感じは持った。そして、こうした「論」を、3つの視点から見られたらおもしろいと思った。つまり、ミュージシャン側から見る視点、音楽業界の人間が見る視点、そして、今回のように外からの例えば象牙の塔からによる視点だ。
コーデイネーター、大和田さん
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歴史。
興味深かった点。
増田さんは現行の「パクリ」概念の初出を朝日新聞の1990年6月3日と紹介された。
僕は遅くとも1980年代初期、ひょっとしたら70年代中期から後期までに音楽業界では「パクリ」という言葉、単語自体は相当使われていたと記憶する。歌謡曲のイントロをもって、これは洋楽の何々のパクリだから、といった使い方をよくしていた。そして、昔から原稿にも書いたような気がする。ただそれが大きな問題になったりはしなかった。今は、ネットがあるので、様々な小さなことでも問題がすぐに顕在化するので、昔と比べると「目立つ」印象は強い。
おそらくそれが80年代後半から90年代にかけて一般化したのだろう。
パクリが大事(おおごと)になると、「盗作」と言われ、裁判になる。盗作例を2例上げ、1例は著作権侵害はなかった、1例はあった、とされたという楽曲を、それぞれ元歌、盗作ではないかとされた曲をかけて紹介された。
さらに同じ曲のカヴァー例を紹介し、そのアレンジの違いなども指摘、作者名義と音楽表現上の影響度は無関係と説明。この時はタイニー・ブラッドショーの「トレイン・ケプト・ローリン」、ジョニー・バーネット版、ヤードバーズ版などを紹介してその違いを説明した。
さらにレッド・ゼッペリンの「レモン・ソング」(1969年)をピックアップして、これがハウリン・ウルフの「キリング・フロア」と似ていることからクレイムが付き、結局、ハウリン・ウルフのクレジットが入り、ゼッペリンのオリジナルからカヴァー扱いになったという例を紹介した。
そして、パクリとカヴァーの違いも的確に紹介された。
このあたりは、まさにこの日のハイライトともいえるあたりでおもしろかった。
(この項続く)(僕が捉えているパクリの歴史などをまとめてみます)
ミュージック・イズ・ミュージックのサイト
(インターFMで番組もあります)
http://musicismusic.jp/en/index.html
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